日本のモノづくりを支える工作機械産業!
日本のモノづくりを支える工作機械産業!
日本は加工貿易立国で、日本でつくり出されるるモノの技術力は極めて高いと、大昔、学校で習った記憶がありますが、「世界最強産業の歴史に学べ」の著者で、東北大学の柴田教授によると、日本の工作機械は世界最強で、工作機械こそが日本のモノづくりを支えてきたのだそうです。
そもそも、モノづくり産業全体は3層に分けられています。最上層には最終製品を作り自動車メーカーや家電メーカーがいます。中間層にはそれらに部品を提供する企業が勢ぞろいし、下部層に部品を作るための工作機械産業が存在する構造です。
工作機械とは、一言で言うと「マザー・マシン(母なる機械)」であり、「機械をつくる機械」とも呼ばれます。僅か約1兆数千億円のニッチな産業なので、一般的には余り知られていませんが、柴田教授が指摘されるように、実は国際的に比べても非常に競争力が高い産業なのです。
工作機械の歴史を見ると、1970年代前半までは、いわゆる職人の経験と知識で工作機械の制御がされていました。職人の匠の技では日本は世界に引けを取らなかったのですが、職人の数が足りず、生産量で常にアメリカやドイツの後塵を拝していました。1970年代後半になると工作機械の制御がコンピューターによる自動制御に転換していったのですが、その時に、いち早くこの転換期の流れに乗って、新技術を取り入れたのが日本でした。そのおかげで1982年から2008年まで、世界最大の生産量を維持したのです。
この転換期に生まれた新技術は「NC装置」でした。これは「Numerical Control」の頭文字をとった略称で、素材に対する工具の順番や加工に必要な作業工程を数値情報で指令を出す装置です。最近の機械はコンピュータ管理による数値制御機能も備えていて、CNC装置とも呼ばれています。
NC装置が日本で導入された背景には2つの企業が大きな役割を果たしました。
1社目は、1975年にMPU(マイクロプロセッサ)を新規事業としてはじめたINTEL社、そして2社目は、1975年にこのMPUを工作機械に取り入れたファナック社です。パソコン産業よりも6年早くMPUを導入したこの2社の共同開発が、その後の工作産業を変えたといっても過言ではないでしょう。
現在は生産量で中国がトップの座を占めていますが、技術力では日本だけでなく、欧米企業にも追いついていません。生産量競争は別として、日本の工作機械産業には、その非常に高い技術水準をこれからも維持してほしいと思います。
日本の出版業界の現状と復活の可能性は?
日本の出版業界の現状と復活の可能性は?
1990年代の終わりころには2万3000店ほどあった書店が、2018年には約8000店(図書カードの端末を設置している店舗)に減ってしまっていると言われています。
原因はいくつかあるのですが、一番大きいのは日本の流通構造です。
現在でも生き延びている欧米の書店とよく比較されるのですが、日本の書籍は値段が欧米に比べると半分程度とも言われています。何故なら、日本には日本出版販売、トーハン、大阪屋栗田といった取次会社が存在し、彼らが在庫リスクを負って流通しているので、書店は書籍を積極的に販売する必要がありません。さらに、欧米では書店に雑誌が置かれていることはありませんが、これらの取次会社が雑誌も同じ形態で書店に提供し、店頭に並べられています。
書店はリスクを負っていないので、回転が良い雑誌を店頭に並べることになってしまいます。安い書籍も雑誌も単体の利幅は少ないので、売れる冊数の数だけが書店の経営を左右します。
次の原因は流通の変革です。まず初めに、コンビニエンスストアが揃って雑誌を販売し始めました。全国にある何万店ものコンビニエンスストアで露出されるわけですから、書店に行く必要性を感じなくなりました。
さらに、最近はインターネットでの注文や購読迄出来るようになり、書店の存在価値が益々低くなっています。
もう一つ原因を挙げるとすれば、日本人の書籍離れがあると思います。様々な雑誌、そしてインターネット経由で情報が取れる時代になり、知識や情報収集にかける時間の価値観も変わってきているのかもしれません。
売上金額の推移でみるともっと厳しい現状が見えてきます。
出版業界の売り上げがピークを迎えた1996年には書籍の販売金額1兆931億円に対して、雑誌の販売金額は1兆5633億円と約1.5倍の規模でした。効率のよい雑誌の売り上げが大きかった当時、出版業界の収益性は高く、それが書店の旺盛な出店の原動力にもなっていました。しかし、現在では、雑誌はインターネットや、携帯端末の普及に伴って急激に市場が縮小し、2017年の雑誌の販売額は6548億円と、書籍の7152億円を下回り、最盛期の3分の1ほどに縮小してしまいました。このことが、雑誌の収益に頼っていた書店の経営と、雑誌で巨大流通網を回してきた取次会社の経営を直撃したのです。
駅周辺や商店街にあった雑誌販売を中心とした従来型の「街の書店」が急速に姿を消しましたし、大手取次会社の中でも、業界3位だった大阪屋、4位の栗田出版販売、5位の太洋社が次々と経営破綻するに至りました(大阪屋と栗田出版は合併して、楽天が実質オーナーの大坂や栗田に引き継がれています)。
これからの書店はさらに落ち込むのだろうか?という疑問に対して、朗報もあります。
アメリカでは2009年から独立系と呼ばれる小規模書店の数が毎年増加しています。そうした書店は書店員たちが独自の品ぞろえをし、カフェを備え、地域向けイベントに力を入れるなど、ネットでは味わえないような人々とのつながりを大切にしているそうです。
日本でも、二子玉にある蔦屋が同じような試みをしています。
日本の出版業界を取り巻く慣習の取り崩しには難しい面もあるのでしょうが、個々の書店が販売する書籍に対するプロ意識を持って、自己の在庫リスクで書籍を店頭に並べ、一定期間が過ぎたら、新古本として値引き販売が出来るようになれば、書店は復活するように思います。現に中古本のブックオフが店舗を拡大していますし、大手の自動車メーカーもパソコン販売店も新古車や製品の値段を下げていますので、消費者側には抵抗感はないのではないのでしょうか?
デービッド・アトキンソン氏の『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』!
デービッド・アトキンソン氏の『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』!
この本が話題になっています。
アトキンソン氏は1965年イギリス生まれで、オックスフォード大学で「日本学」を専攻し、日本に30年も住んでいる小西美術工藝社社長であり、作家であり、さらに、2017年から日本政府観光局特別顧問を務めています。
この本は、日本の現状認識が人口減少と高齢化によるデフレ圧力の拡大という点にあります。その前提に立って、生き延びるために生産性を高め、高付加価値・高所得経済の国に転換しなければならないと説いています。
具体的な施策は、①供給過剰を解消するための輸出振興、②企業間のサバイバルゲームを解消するためのM&A促進、③労働意欲を向上させ生産性を高める最低賃金引上げ、④さらに生産性を高めるための、本格的な人材育成トレーニングの確立を挙げています。
私達日本人があまり気付いてない点ことなのですが、同氏は的確に次のように日本の問題点を指摘しています。
「世界を見渡してみると、高齢化社会を迎える国は多々ある。しかし欧米では少子高齢化は進んでいても、人口減少は日本ほど深刻ではない。ところが日本は、高齢化よりもさらに重要な人口急減少という問題も同時に抱えている。つまり日本は少子高齢化と人口減少問題を同時に考えなくてはいけない唯一の先進国なのだ。」
日本の生産性は世界第28位と低迷していますが、人材評価では世界で第4位ということで、生産性の伸び代は大きいそうです。
国家として最低賃金の引き上げを実現してもらった上で、老若を問わず生産性の向上に取り組む時代が来るのではないでしょうか?
【怖いへんないきものの絵】!
【怖いへんないきものの絵】!
『怖い絵』の著者である中野京子氏と『へんな生き物』の著者である早川いくを氏の合作である【怖いへんないきものの絵】が面白いらしいです。早川氏が“へんないきもの”が描かれた西洋絵画を見つけてきては、中野先生にその真意を尋ねに行き、それに対して、中野氏が思いもよらぬというか、刺激的な回答をする内容だそうです。美術館などで絵を見ても、何気なく眺めていることが多い気がする方は、この本を読むことをお勧めします。
堺屋太一氏の「平成三十年」!
堺屋太一氏の「平成三十年」!
今年の2月に逝去された堺屋太一氏の著書「平成三十年」が注目を集めています。
この予測小説は、1997年6月1日より1998年7月26日まで、朝日新聞朝刊に連載した小説がベースになっています。この連載が終了した直後に、同氏は小渕内閣の経済企画庁長官や情報産業担当大臣として関与した時期があり、その間に変化した内外の情勢を含めて編、編集4年間の修正加筆を経て世の中に出た未来予測小説です。
同氏は、まず初めに、今後日本で確実に進むであろう三つのことを前提として取り上げました。
① 少子高齢化:平成30年には「団塊の世代」は60歳代後半の高齢者となり、その子供たちの「団塊ジュニア」も40歳代に入るので、本編主人公の木下和夫とその父昭夫は「団塊とその子」としました。
② 地方の過疎化:もしその時までに日本が首都機能の移転をしていなければ、中山間地は凄まじい衰退に陥っていることと、東京で営まれる官僚機構は、東京一極集中の仕組みを保つだろうと想定しました。
③ 知価社会化:様々な新産業と新製品が出現し、創業と閉業が増加していることを想定しました。
そして、本編主人公の木下和夫とその父昭夫を通じて、平成30年の姿を様々な分野で記述しています。外れていることも多少はありますが、当たっていることの方が多く、同氏の洞察力に驚きます。
今の時代に対する警世の意味合いも含まれていますので、ぜひ読んでみては如何でしょうか?