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日本におけるチリワインとアルゼンチンワインの明暗!

カテゴリ: 衣・食・住 公開日:2019年11月15日(金)

日本におけるチリワインとアルゼンチンワインの明暗!

南米のワインといえば誰もがチリワインとアルゼンチンワインと答えると思います。この2カ国のワインが日本で広まった過去と現在を見るとその変化に驚きがあります。
2018年における世界のワイン生産国としては、アルゼンチンが5位でチリが7位になっています。アルゼンチンは従来から5位でしたが、チリは毎年順位を上げています。歴史を見ると両国とも16世紀半ばにスペインの征服者達がブドウの苗木を持ち込んで栽培したのが始まりとされています。そして、その時のブドウはパイスといい、特にチリでは原点と言われる品種でした。その後19世紀後半に両国ともワインの大規模生産が開始されたので、本格的なワインの歴史は18世紀後半といってもいいのではないでしょうか?そして、1990年以降に世界でも大躍進を遂げています。
アルゼンチンの代表品種は「黒ワイン」とも称されるボルドー原産で赤ワインのマルベックと白ワインのトロンテスです。特にマルベックには曰くがあります。ボルドー地方ではより貴族的な味わいと評されるメルロを主役として選択したため、個性の強いマルベックはメルロに追われてアルゼンチンに行ったという説があります。一方、アメリカでマルベックへの人気が高まり、一時期オーストラリアからシラーのワイン輸出が激減したと言われています。(画像はマルベック)

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一方にチリも、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、リースリングなど、現在もチリのワイン造りを支える主要な品種が、この時期に持ち込まれた苗木を祖先としています。特筆すべきは、ヨーロッパを襲ったフィロキセラの存在です。19世紀半ばにヨーロッパの産地を襲ったフィロキセラはブドウの木の根を傷めるアブラムシの一種で、ヨーロッパ系の品種はこの害虫に全く耐性が無かったため、フランスを含め当時のヨーロッパの主要ワイン産地はほぼ全滅という状況にまで追い込まれてしまったのです。自国で職を失ったフランスのワイン醸造の専門家の多くが、主要品種を携えてチリに渡って行ったのです。チリは地形的に害虫の侵入を受けにくく、現在に至るまでフィロキセラの被害に遭っていない世界における唯一の国です。フィロキセラに侵されたヨーロッパは、耐性のあるアメリカ系品種の台木にヨーロッパ系品種を接木するという方法で再生しましたが、フィロキセラ以前に苗木が持ち込まれたチリでは、今でもヨーロッパ系品種のブドウが自根で栽培されているそうです。
日本との関係に目を向けると、今から30~40年程前は日本でワイン栽培がそれほど活発でなかった為、大量のバルクワイン(150リットル以上のコンテナで輸送するワイン)を輸入し、ごく少量の日本ワインを加えたりしてワインを製造販売していました。その時代にバルクワインの3大輸出国の一つがアルゼンチンだったのです。(他の2つはユーゴスラビアとスペインでした)。ところが、2007年9月に日本とチリ二国間の「日本チリ経済連携協定」が発効されると
状況は様変わりし始めました。チリワインの関税が12年かけて段階的に削減され、2019年4月に完全撤廃されたのです。この12年間で、チリワインの輸入量は約5倍に拡大し、昨年も日本の輸入ワインはチリが1位の座を獲得しています。欧州ワインもEPAにより今年の2月にワインの関税が撤廃された為、輸入が増加しています。チリワインが安価で人気を集める一方、高級ワインで定評のあるフランスが日本向け輸出額で100億円の増額を果たし、輸入金額では1位の座をしっかり確保しているのです。このようなにEPAの影響により、アルゼンチンは8位~9位に後退してしまいました。昨年末に合意した11カ国のTPAの影響で今後オーストラリアとニュージーランドのワインも輸入の増加が見込まれます。日本というワイン消費の巨大市場を失わないために、アルゼンチンも早く日本とEPA締結に取り組んでは如何でしょうか?そうすれば、アルゼンチンの外貨獲得は増え、一方、我々もマルベックやトロンテスを安価で美味しく味わえるので、ウィン・ウィンの関係が築けると思います!