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日本の出版業界の現状と復活の可能性は?

カテゴリ: 文化・芸術 公開日:2019年04月19日(金)

日本の出版業界の現状と復活の可能性は?

1990年代の終わりころには2万3000店ほどあった書店が、2018年には約8000店(図書カードの端末を設置している店舗)に減ってしまっていると言われています。

原因はいくつかあるのですが、一番大きいのは日本の流通構造です。

現在でも生き延びている欧米の書店とよく比較されるのですが、日本の書籍は値段が欧米に比べると半分程度とも言われています。何故なら、日本には日本出版販売、トーハン、大阪屋栗田といった取次会社が存在し、彼らが在庫リスクを負って流通しているので、書店は書籍を積極的に販売する必要がありません。さらに、欧米では書店に雑誌が置かれていることはありませんが、これらの取次会社が雑誌も同じ形態で書店に提供し、店頭に並べられています。

書店はリスクを負っていないので、回転が良い雑誌を店頭に並べることになってしまいます。安い書籍も雑誌も単体の利幅は少ないので、売れる冊数の数だけが書店の経営を左右します。

次の原因は流通の変革です。まず初めに、コンビニエンスストアが揃って雑誌を販売し始めました。全国にある何万店ものコンビニエンスストアで露出されるわけですから、書店に行く必要性を感じなくなりました。

さらに、最近はインターネットでの注文や購読迄出来るようになり、書店の存在価値が益々低くなっています。

もう一つ原因を挙げるとすれば、日本人の書籍離れがあると思います。様々な雑誌、そしてインターネット経由で情報が取れる時代になり、知識や情報収集にかける時間の価値観も変わってきているのかもしれません。

売上金額の推移でみるともっと厳しい現状が見えてきます。

出版業界の売り上げがピークを迎えた1996年には書籍の販売金額1兆931億円に対して、雑誌の販売金額は1兆5633億円と約1.5倍の規模でした。効率のよい雑誌の売り上げが大きかった当時、出版業界の収益性は高く、それが書店の旺盛な出店の原動力にもなっていました。しかし、現在では、雑誌はインターネットや、携帯端末の普及に伴って急激に市場が縮小し、2017年の雑誌の販売額は6548億円と、書籍の7152億円を下回り、最盛期の3分の1ほどに縮小してしまいました。このことが、雑誌の収益に頼っていた書店の経営と、雑誌で巨大流通網を回してきた取次会社の経営を直撃したのです。
駅周辺や商店街にあった雑誌販売を中心とした従来型の「街の書店」が急速に姿を消しましたし、大手取次会社の中でも、業界3位だった大阪屋、4位の栗田出版販売、5位の太洋社が次々と経営破綻するに至りました(大阪屋と栗田出版は合併して、楽天が実質オーナーの大坂や栗田に引き継がれています)。

これからの書店はさらに落ち込むのだろうか?という疑問に対して、朗報もあります。

アメリカでは2009年から独立系と呼ばれる小規模書店の数が毎年増加しています。そうした書店は書店員たちが独自の品ぞろえをし、カフェを備え、地域向けイベントに力を入れるなど、ネットでは味わえないような人々とのつながりを大切にしているそうです。

日本でも、二子玉にある蔦屋が同じような試みをしています。

日本の出版業界を取り巻く慣習の取り崩しには難しい面もあるのでしょうが、個々の書店が販売する書籍に対するプロ意識を持って、自己の在庫リスクで書籍を店頭に並べ、一定期間が過ぎたら、新古本として値引き販売が出来るようになれば、書店は復活するように思います。現に中古本のブックオフが店舗を拡大していますし、大手の自動車メーカーもパソコン販売店も新古車や製品の値段を下げていますので、消費者側には抵抗感はないのではないのでしょうか?