メタンハイドレード(略称メタハイ)は日本のエネルギー自給率(約7%)を解消できるのか?
メタンハイドレード(略称メタハイ)は日本のエネルギー自給率(約7%)を解消できるのか?
純国産エネルギー資源として期待されているメタハイ、注目されてから既に20年以上は経っています。メタハイとはそもそもどんなもので、研究開発の現状はどうなっているのか、調べてみました。
メタハイは水分子とメタンガス分子から成る氷状の個体結晶です。氷分子の“かご”の様な分子構造が特徴で、メタンガスの様な小さな分子を中に閉じ込めることが出来ます。メタンは、現在は油田やガス田から採掘され、天然ガスの主成分として都市ガス、発電燃料、天然ガス車、燃料電池などに利用されています。
メタハイが発生するには2つの条件が必要で、それらは「高い圧力」と「低い温度」です。日本には2年以上凍結している”永久凍土”はないので、メタハイを求めるには日本周辺の深海が対象になります。これまでの調査では、南海トラフ(東海地方沖から宮崎県沖)の北側に最大4兆2000億立方メートル、南海トラフの北海道周辺海域に6兆立方メートルのメタハイが存在すると言われ、これが事実とすれば、日本の天然ガス使用量の100年分に相当します。
日本近海に存在するメタハイはその状態によって3種類に分類されていますが、現在技術開発が主に進められているのは、砂層の砂粒と砂粒の孔隙に存在する「砂層型」と呼ばれるメタハイです。これを選択した理由は、既存の石油・天然ガスの生産技術や設備を活用できる可能性が高く、コスト面で実用化への近道とされているからです。メタハイからメタンガスを取り出すには、メタハイの特徴である高圧を下げるか、高音にするかなどの方法がありますが、現在は「減圧法」での技術開発が進んでいます。
2001年に経済産業省が主体となり、開発計画を実行するコンソーシアム(MH21)が組織され本格的な開発が始まりました。その後、探査や陸上試験を中心とした「フェーズ1」、海洋産出試験や詳しい資源量調査を実施した「フェーズ2」を経て、現在は、将来の商業化を見据えた技術開発や海洋産出試験を実施する「フェーズ3」の段階まで来ています。2019年3月まで海洋試験のデータ分析などを行い、より長期にわたって効率的、安定的に生産する方法を検討することになっています。これから約10年後には、民間企業が主導する商業化のためのプロジェクトがスタートする予定ですが、先は長いですね。
最大の問題は探掘と輸送に関わるコストです。井戸を掘れば勝手に吹き出す既存の油田や天然ガスに比べると、現状では20倍ほど高くなってしまいます。従い、近未来にメタハイがエネルギー原料の主要資源になることはなさそうですが、仮に、将来日本が海外からエネルギーの供給を受けられなくなった時には絶対に必要な資源なので、開発速度も上げながら、商業化を目指してプロジェクトを進めて行かなければなりません。