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アルツハイマー病に関する2つの論文!

カテゴリ: 科学、自然 公開日:2019年02月16日(土)

アルツハイマー病に関する2つの論文!

NPO法人オール・アバウト・サイエンスジャパン代表理事である西川氏が、アルツハイマー病に関し、最近発表された2つの論文の解説をされていますので概略を記載します。

① アルツハイマー病(AD)と歯周病菌の関係:

米国の創薬ベンチャー・Cortexymeが「アルツハイマー病の脳内に存在するP.gingivalis:病気の原因を示す証拠と小分子を用いた治療」という論文を発表し、もし、そこに示された結果が確認されて仮説が正しいとすると、この分野がひっくり返るくらいの大発見と西川氏は指摘しています。このベンチャー企業は歯周病菌P.gingivalisが分泌するタンパク分解酵素Gingipainに着目しました。ADの脳組織と正常の脳組織でGingipainの存在を比較するとAD患者さんは圧倒的に高値を示し、さらに、海馬(長期記憶や空間学習能力に関わる脳の器官)にもGingipainが存在することを指摘しています。ADの一つの引き金は神経細胞内にリン酸化Tauが沈殿することだそうですが、蛋白質分解酵素のGingipainがTauたんぱく質を切断し、リン酸化したTauが沈殿して細胞が死ぬためにADが発症すると論じているのです。並行して、同社はGingipain阻害剤(Cor286,Cor271)も開発していますが、現在、アメリカで治験に使われている阻害剤Cor388の第1相の治験は終わっており、今後始まる第2/3相の治験でどのような結果が出るのか注目したいと西川氏はコメントしています。

② 運動によりアルツハイマー病の症状が改善するメカニズム:

ブラジル・リオデジャネイロ大学、米国コロンビア大学、そしてカナダ西オンタリオ大学の共同チームが(運動と連動するFNDC5/irisinがアルツハイマー病のシナプスの可塑性と記憶を回復させる)という論文を発表しました。運動すると筋肉の膜上に発現しているFNDC分子が切断され、irisinと名付けられた分子が細胞から離れて血中に分泌されることがこれまでの研究で知られていましたが、今回の共同チームは、運動が効果があるなら、irisinがその原因ではないかと着想しました。まず、FNDCが筋肉だけではなくADの主要な病巣である海馬でも強くFNDCが発現してirisinを分泌していることを確認しました。次に進行したAD、初期のAD、そして正常の海馬でのirisin量を調べ、進行性ADで脳内のirisinが著明に低下していること、また患者さんの脳脊髄液中のirisinも著明に低下していることを発見したのです。詳しくは記載しませんが、その後、マウスモデルを用いて実験を重ね、運動とADとの相関関係が分子的に説明されています。今後、人間でも運動で確かにirisinが高まることが証明でき、更には、しっかりした運動メニューができれば、irisinはアルツハイマー病の薬剤として期待できるし、記憶力低下をエクササイズで防ぐことすら出来ることになるかもしれません。現在使われているアリセプト(アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状進行を抑制する薬で、認知症治療薬の中でも古くから使用されています。)と同じような対症療法になるのだろうと西川氏は期待を込めてコメントしています。