タンパク質>ペプチド>アミノ酸!
カテゴリ: 科学、自然
公開日:2018年12月11日(火)
タンパク質>ペプチド>アミノ酸!
炭水化物、脂質と並ぶ人間の三大栄養素で、体内には10万種類以上も存在していると言われるたんぱく質に注目してみました。簡単に表現するとタンパク質はアミノ酸の結合体になります。人間のDNAは2万種類程度なので、そのDNAを設計図としてできる立体構造のタンパク質も2万種類です。しかし、出来上がったタンパク質は「途中で切れる」、「3次構造を作る」、「糖鎖が結合する」、「リン酸化される」などの修飾を受けて、さらに種類を増やすことなどによって10万種類ものタンパク質が出来上がるのだそうです。タンパク質の基はアミノ酸でその数は20種類しかありません。アミノ酸が初めて発見されたのは1806年で、20番目のスレオニンは発見されたのが1935年ですから、20種類を特定するのに100年以上かかっています。もう一つペプチドという名称があります。これはアミノ酸が2~50結合したものを言います。そしてタンパク質はペプチドが2つ以上集合した総称ということになります。さらに、皆さんがよく聞く言葉にコラーゲンがあります。コラーゲンはタンパク質の1種で、人間の身体をつくっているタンパク質の30%を占めています。主にグリシン、プロリン、アラニン、リジンで構成され、これらがつながってできた鎖を3本組み合わせた「三重らせん構造」をしているのが特徴です。20種類のアミノ酸に焦点を当てると、人間の体内で合成できない必須アミノ酸と、合成できる非必須アミノ酸に分けられます。さらに、必須アミノ酸でも35%を占めるアミノ酸を分岐鎖アミノ酸と称します。バリン、ロイシン、イソロイシンの3つですが、役目としては、①・運動によるたんぱく質の分解を防ぐ、②筋たんぱく質の合成を促進する、③中枢性疲労の予防・回復などがあります。それでは各アミノ酸の特徴を見てみましょう。
必須アミノ酸:
ロイシン:身体の筋肉維持に必要なアミノ酸です。成長や肝機能向上に関与し、肝細胞の増殖・分 化を正常に保ちます。たんぱく質の生合成を促進し、筋たんぱく質を維持します。
イソロイシン:身体の筋肉や血液中のヘモグロビンをつくるのに大切なアミノ酸です。成長に関与し、神経機能を助けています。血管の拡張や肝機能向上にも関与しています。
バリン:身体の筋肉をつくるのに大切なアミノ酸です。成長に関与し、肝機能を向上させ、血液中の窒素バランスの調整も行っています。不足すると食欲が低下するため、栄養不良の悪循環が起こります。
リジン:小麦や米など穀類には少ないアミノ酸です。成長に関与し、身体の組織を修復することを助け、肝機能を向上させます。また、脂肪をエネルギーに変えるのに必要なカルニチンという物質の材料になります。
スレオニン:人が体内で全く合成できないアミノ酸です。成長に関与し、脂肪肝を抑制します。魚や鶏肉、肉などに多く含まれています。
トリプトファン:体内でナイアシンになり、脳内神経伝達物質セロトニンやメラトニンの材料となるアミノ酸です。コレステロールや血圧のコントロールに関与しています。
ヒスチジン:体内での合成が遅いアミノ酸で、幼児の場合不足すると湿疹ができてしまう原因となる必須アミノ酸です。成長に関与し、ヘモグロビンや白血球の生産にも関与しています。血液中のヘモグロビンに多く含まれているので、不足すると貧血になることがあります。
メチオニン:身体の中でタンパク質を生成する際に必ずいちばんはじめに必要なアミノ酸です。不足すると、すべてのタンパク質合成に支障が出てしまう重要なアミノ酸です。薬物中毒の解毒に関与し、肝機能を改善します。また、脂肪をエネルギーに変えるときに必要なカルニチンという物質の生合成に関与しています。
フェニルアラニン:脳内神経伝達物質ドーパミンやノルアドレナリン、黒色色素メラニンの材料になるアミノ酸です。血圧の上昇に関与し、鎮痛作用があります。
非必須アミノ酸:
アルギニン:成長期にその合成能力が足りないため、大人では非必須アミノ酸ですが、小児では必須アミノ酸となっています。成長ホルモン、インスリンやグルカゴンの分泌に関与します。
グルタミン:グルタミン酸とアンモニアからつくられます。ストレスなどで足りなくなる場合もあるために準必須アミノ酸といわれます。小腸や免疫細胞のエネルギー源で、消化管粘膜の保護を助けます。血漿中にもっとも多いアミノ酸です。
グリシン:コラーゲンの約3割を占めています。体内では神経伝達物質としても働き、赤血球や胆汁酸抱合体の材料です。睡眠の質に関与し、体内ではセリンやスレオニンからつくられます。
アラニン:体内のほとんどすべてのタンパク質に存在しています。グルタミン酸とピルビン酸からつくられ、様々なエネルギー源となります。アミノ酸の中でいちばんグルコースに変わりやすいアミノ酸です。
セリン:体内でグリシンやグルタミンなどからつくられます。様々な酵素の部分を構成し、タンパク質分解酵素のような多くの酵素の活性中心に存在します。情報伝達に関与し、中枢神経の栄養因子ともなります。
チロシン:体内でフェニルアラニンからつくられます。ドーパミン、ノルアドレナリン、甲状腺ホルモン、黒色色素メラニンなどの原料になります。非必須アミノ酸ですが、チロシンの摂取は必須アミノ酸フェニルアラニンの節約につながります。
システイン:硫黄を含んでいて、身体のタンパク質の立体構造を保つのに大切な役割を果たし、タウリンや、エネルギーをつくるのに大切な補酵素CoAの成分でもあります。
アスパラギン:世界で最初にアスパラガスから発見されたアミノ酸です。アスパラギンの一部は水素結合に関与し、タンパク質の表面では水や他の極性のあるアミノ酸とくっつく性質があります。
プロリン:体内ではグルタミン酸などからつくられます。コラーゲンの材料となり、角質層の保湿に関与し、コラーゲン合成に役立っています。
アスパラギン酸:タンパク質の親水性などで重要な役割を担っています。身体の中に存在する割合としては少ないアミノ酸で、神経伝達に関与しています。食品としては、人口甘味料アスパルテームの原料でもあります。
グルタミン酸:小麦グルテンから発見されたアミノ酸です。アスパラギン酸同様にタンパク質の親水性で重要な役割を果たしています。脳のアンモニア解毒の気質となり、アンモニアのコントロールに関与しています。興奮性神経伝達物質としても働き、GABAやグルタチオンの材料でもあります。タンパク質に話を戻しますが、成人日本人が一日当たり摂取するタンパク質の必要量については次のようになっているそうです。
タンパク質の推定平均必要量(g/kg 体重/日)=0.65(窒素平衡維持量)(g/kg 体重/日)÷0.90(消化率)=0.72(g/kg 体重/日)
この計算式で体重70㎏の人が摂取すべきタンパク質の量は50g/日だそうです。あまりにも少なすぎるように思いますがどうでしょうか?下記は20種のアミノ酸分子構造です。