本庶京都大学特別教授・ノーベル医学・生理学賞授与!
本庶京都大学特別教授・ノーベル医学・生理学賞授与!
本庶特別教授がノーベル医学・生理学賞の授与が決まりました。対象となったのは、本庶特別教授の基礎研究に小野薬品工業が協力して製品化にこぎつけた「オプジーボ」と称し、世界のがん治療を革新した免疫治療薬です。オプジーボは「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬剤ですが、がんの発生過程からオプジーボの必要性に至るまでを辿ってみましょう。
① 人間の周りには、細菌やウイルスなどの病原体が無数に存在しており、常に体内に侵入してくるのですが、それらの病原体などから体を守っているのが免疫です。免疫は、常に体内を監視しており、がん細胞も含めて異物を見つけると、その異物を攻撃して体内から排除しようとします。
② この役目を担っているのは白血球の一種であるリンパ球のT細胞です。リンパ球には他にNK細胞とB細胞がありますが、T細胞が主に異物(感染した細胞など)を見つけて排除するという、免疫機能において重要な役割を担っています。
③ 体内では毎日多数の異常な細胞も発生していますが、通常は免疫の力によって異常な細胞は排除されています。一方、免疫細胞には、正常な細胞を攻撃しないように、過剰な免疫が働かないようブレーキとなる「制御システム」も備わっています。これを「免疫チェックポイント機構」と呼びます。
④ がん細胞は、正常な細胞からがん細胞へ変化していく中で、「免疫から逃れる力」を得ていきます。がん細胞がPD-L1というタンパク質をつくり出し、T細胞に存在する物質(PD-1)と結合すると、免疫チェックポイント機構を変質強化するが如くT細胞が働かないようにするのです。
⑤ ここで今回の主役であるオプジーボの登場です。オプジーボは、T細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬剤なのです。オプジーボが血液に入ると、T細胞のPD-1と結合し、がん細胞とT細胞の結合が阻害されます。その結果、T細胞はがん細胞からの妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。
本庶研究室で「PD-1」を発見してからオプジーボが販売されるまで二十数年かかっているそうですが、ノーベル賞授与に十分値する成果だと思います。日本ではすでに悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、胃がんなどのがん種での投与が承認されていますが、今後は一人でも多くのがん患者が恩恵を受けられるように、オプジーボの適応拡大に期待しましょう!