宇宙全体の物質エネルギーを構成しているのは?
宇宙全体の物質エネルギーを構成しているのは?
物理学と天文学の難しい話ですが2013年の欧州宇宙機構の発表によると、宇宙全体の物質エネルギーは我々が見知ることが出来る物質(大半を占めていると思われるのは水素やヘリウム)は4.9%、暗黒物質(ダークマター)が26.8%、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)が68.3%です。見える物質日本人は天体そのものやガス状帯にあるすべての原子が含まれています。暗黒物質(ダークマター)とは、「重力を通してのみ物質と影響を及ぼし合う見えない物質」です。暗黒物質の量の測り方はまず、見えている光から星の質量を推定し、次に、見えている星の運動から、銀河の総質量を推定します。総質量から、星の質量を引くと、残りは〈見えていない物質の質量 = 暗黒物質の質量〉と考えらます。そもそも暗黒物質が注目されたのは次の様な疑問でした。宇宙には数多くの銀河が集った「銀河団」と呼ばれる天体の存在があり、銀河団に属する個々の銀河は秒速約1000キロメートルという非常に大きな速度で乱雑な運動をしています。疑問は、「そんなに速く運動している銀河が、なぜひとつのまとまりとして集まり銀河団を形成できているのか」ということでした。銀河団は銀河が互いの重力で引かれあって集まっていると考えるのが自然なのですが、銀河の運動速度はとても大きくて、銀河や銀河どうしの間に満ちているガス(=見えている物質)が持つ重力だけでは互いを繋ぎとめられません。そこで、「銀河が大きな運動速度を保ちつつ集団でいられるのは、見えていないけれど重力を及ぼす物質が銀河団に多数含まれているから」という考えが生まれました。また、銀河団には摂氏約1兆度に達するガスが閉じ込められているのですが、これほど高温のガスを閉じ込めておくには強い重力が必要で、見えている物質だけでは足りないと分かったのです。決定的な証拠は銀河団同士の衝突した跡とされる「弾丸銀河団(Bullet Cluster)」を観測することで得られました。この弾丸銀河団のX線を観測したところ、画像の中央に広がる赤い靄の様な物質(ガス)の分布があり、一方で、重力源がどこにあるかを調べることができる「重力レンズ効果」を用いた結果、赤い物質を取り囲むようにしている青い靄状の重力源の分布が確認できました。普通の物質の分布と重力源の分布がかなり異なっていることから、「見えないけれど重力だけは及ぼす物質」がたくさんあることがハッキリ分かったのです。
暗黒エネルギーとは、宇宙全体に広がって負の圧力を持ち、実質的に「反発する重力」としての効果を及ぼしている仮想的なエネルギーです。互いに反発する性質があるため、宇宙膨張を加速する原因となり得ます。しかしビッグバンから現在も観測されている宇宙の加速膨張は暗黒エネルギーの質量だけでは説明がつかないようで、ダークエネルギーよりもずっと高いエネルギー密度の反発力を持つであろう「インフレーション」という物質の存在が指摘されています。宇宙の話しは奥が深いですね!