惜しまれる補聴器業界の4年間!
惜しまれる補聴器業界の4年間!
先日補聴器業界に関する市場調査である4回目のJapanTrackの内容が公表されたことはブログでお伝えしました。
直近の2018年から4年経過しましたが、その間コロナ禍があり、それがどのように補聴器業界に影響するのかが注目されました。
補聴器の出荷台数はコロナ感染出現の年は大幅に落ち込みましたが、
その後徐々に回復し、昨年は一度達成した60万台に回復したのでむしろ明るい未来のイメージが強かったのです。
補聴器業界17年間の経験と知識及び昨今の補聴器メーカーや補聴器販売店の活動から、
2022年のJapanTrackで注目したことは次の5つでした。
1.全体的な普及率の変化
2.軽度・中等度難聴者の補聴器普及率
3.先進国比較
4.耳鼻科医の補聴器推奨率
5.補聴器を買わない理由トップ6の内容
6.認定技能者という名称の知名度
補聴器メーカーも補聴器販売店もそれぞれの団体及び各企業として、
ここ四年間補聴器市場拡大の為に鋭意努力して来た事は承知していますが、
1~5の数字を2018年と比較するとほとんど改善が見られず四年間の努力は報いられなかったと言わざるを得ません。
全体的な普及率は2018年の14.4%から2022年の15.2%の微増でした。
しかし、従来型補聴器の増加は約1万台だったのに対し、
アメリカのFDAが認可したことで急激に増えたOTC向け製品(既成耳あな型)が約1万4千台でしたので、
結局OTC製品が4千台だけ伸びた結果になっています。
難聴の種類では軽度・中等度難聴者が大半を占めています。
業界を挙げて取り組んで来た普及率の向上は実はこの軽度・中等度難聴者が対象なのですが、
2018年は両方の非装用者合わせて79%の方が補聴器を装用していませんでした。
2022年は81%とむしろ悪化しているのです。
4年間の業界をあげた広報・広告の方向性に誤りがあったのかも知れません。
先進国比較では相変わらず特に欧州諸国に遅れをとっています。
補聴器の発祥が欧州であったことや言語が子音系であることが考えられます。
但し、韓国が37%に対し日本が15%と言うのは何故なのでしょうか?
耳鼻科医の補聴器推奨率はメーカーと耳鼻科医の連携が強化され講演会などが頻繁に行われたにもかかわらず、
耳鼻科医の63%が装用の必要性を否定しているのです。
2018年は67%でしたから多少は改善しているのですが、
業界をあげて難聴が気になったら先ず耳鼻科医に相談しましょうと広報しているにしては改善が低すぎるのではないでしょうか?
2018年と2022年の補聴器を買わない理由トップ6の内容を記載します。
2022年 2018年
わずらわしい: 1位 1位
難聴がそれほどひどくない: 2位 3位
補聴器を使用しても元の聞こえに戻らない: 3位 2位
補聴器を購入する経済的な余裕がない: 4位 (9位)
補聴器は騒音下では役に立たない: 5位 5位
ほとんどの場所でよく聴くことが出来る: 6位 4位
低音の人の声が聴きにくいだけ: (7位) 6位
補聴器の性能はこの4年間でかなり進歩しました。
販売する担当者の知識や経験も上がったはずなので、理由の上位がほとんど変わっていないのは何故なのでしょうか?
一般には知名度が相当低い認定技能者ですが、ここ四年間で人数は飛躍的に増えました。
2018年と2022年では質問内容が多少違うので単純比較は出来ませんが、
2018年は補聴器を購入した際に対応した人を認定技能者と認識したのは50%でした。
2022年に補聴器保有者に認定技能者という名称を知っているか訪ねたところ、知っていたのはわずか41%でした。
毎年高額の経費を費やして技能者数の拡大と技能者としてのレベルアップに務めてきた様ですが、費用対効果に大きな疑問を感じます。
結論としては補聴器が庶民の身近なものにならなければ市場の拡大は出来ないということだと思います。
印象が良くわかりやすい漫画形式のPRとか、本人も軽度難聴の人気芸人に、
幅広い分野で軽度難聴者と補聴器有用の体験インタビューをしてもらうのが良い方法の様に思います!